ポリゴン・コンポーネント とは、平坦には折りたためない折り紙分子を構造単位として用い、面と角によって立体形状を構築するためにKamiori-Studioが考案した設計概念です。

折り進める過程で自然に立体化し、エッジの効いたポリゴン的な形状が生まれるのがポリゴン・コンポーネントの特徴です。Kamiori-Studioでは、この非平坦な折り紙分子を用いることで、写実性と抽象性が同居する立体的な折り紙表現を探究しています。

折り紙分子という考え方

折り紙作品をデザインするためには、まず設計図を考える必要があります。この設計図は一般に展開図 と呼ばれ、作品を開いた状態で紙に山折り・谷折りの線をすべて記録したものです。

いくつかの作品について展開図を描いていくと、あることに気づきます。
それは、まったく違う作品同士でも、繰り返し現れる共通の折り方のパターンが存在するという点です。

このような再利用可能な構造単位は、「折り紙分子(Origami Molecule)」と呼ばれます。
折り紙分子は、

  • ある程度まとまった折り線の集合
  • 単体の分子で折りたたむことができる
  • 他の分子と組み合わせることで全体構造を形成する

という性質を持ちます。

平坦分子が前提だった折り紙設計

従来の折り紙設計では、多くの場合平坦に折りたためる構造が重視されてきました。
それは、数学的・幾何学的な扱いやすさ、展開図としての整理のしやすさといった理由から、自然な流れだと考えられます。

しかし、設計のために多くの展開図を観察していく中で、ある種のパターンが平坦に畳めないことに気づきました。
特に顕著だったのが、蛇腹構造の内部の中に現れるパターンです。

これらの構造は、

  • 折り進めると自然に立体化し
  • 完全に平面へ戻すことができない
  • 折りそのものが立体形状を前提としている

という特徴を持っていました。

このような非平坦な折り紙分子を用いて形を作ると、面がはっきり分かれ、エッジが強調されるという明確な傾向が現れます。結果として生まれる形状は、どこか昔の3Dゲームに登場するポリゴンモデルのような印象を持つものになります。

この特徴から、Kamiori-Studioではこの種の非平坦分子を「ポリゴン・コンポーネント」と命名しました。

ポリゴン・コンポーネントの構造分類

ポリゴン・コンポーネントは、単一の形状ではなく、立体構造のバリエーションとして体系的に整理することができます。

Kamiori-Studioでは、基本となる立方体構造を起点に、切頂・歪み・貫通・帯構造などの変形を加えた構造、立方体構造の構成要素切り出した構造などを個別のポリゴン・コンポーネントとして分類しています。


1. 基本コンポーネント

最も基本となるポリゴン・コンポーネント群です。この構造を組み合わせることで、より複雑なコンポーネントを作ることができます。

鈍角三角錐

先端の立体角がすべて90度で構成された、扁平な三角錐。
立方体や直方体の頂点を形づくる基本要素として用いられる。

鈍角三角錐

鈍角三角錐

Pyramid v1.0

鋭角三角錐

先端が鋭く伸びた細身の三角錐で、構造的に安定している。
単体ではツノのような形状を作りやすい。
複数を組み合わせることで立方体や四角錐などの立体構造を作ることができ、応用性が高い。


2. 立方体系コンポーネント

応用性が高い、立方体をベースとしたコンポーネントです。立体折り、立体沈め折りの技法、基本形からの変形などの技法を使っており、構造理解と応用の起点になります。

基本立方体

立方体の基本形。面と角の関係を理解するための基礎構造。

帯付き立方体

周囲に帯状構造を持つ立方体で、基本立方体の構造同位体
立体化構造が表面にあり可動する構造のため、他の形への変形がしやすい。

帯付き立方体

帯付き立方体

Cube v1.5

裏返し立方体

基本立方体の内部構造を外側に出すように反転させた構造。三角柱が立方体を囲んでいる装飾の表現が行える

Inverted Cube

Inverted Cube

Cube v1.1

立方体(切頂)

帯付き立方体から頂点を切り落としたような構造。カットグラスのような鋭く窪んだ表現ができる。

Truncated Cube

Truncated Cube

Cube v1.2

立方体(歪み切頂)

帯付き立方体から頂点を切り落としつつ、面に歪みをつける構造。有機的・生物的形状への橋渡しとなる。

立方体(歪み切頂)

立方体(歪み切頂)

Cube v1.4

変形立方体(台形)

立方体の側面の角度を変化させ、台形の形状に変形させた構造。方向性や傾きを持つ形状設計に向いている。

Trapezoidal Prism

Trapezoidal Prism

Cube v1.3

対角グリッド立方体

対角グリッドで作る立方体。
上面に模様ができ、完全な立方体になる。
グリッド数を変えることで高さを変え、直方体を作ることもできる。
別の構造と組み合わせやすく、植物などを作ることができる。

対角グリッド立方体

対角グリッド立方体

Cube v1.6

欠損立方体

対角グリッドで作る立方体。
全面に模様ができ、一部に穴ができる。別の構造と組み合わせやすく、植物などを作ることができる。

欠損立方体

欠損立方体

Cube v1.7


3. 錐体・多面体コンポーネント

集合四角錐

先端が鋭い形状の四角錐。三角錐構成単位をねじり折りで4つ組み合わせて作ることができる。
内部に骨組みのような構造ができるため、強度が高いことが特徴。

集合四角錐

集合四角錐

Pyramid v1.2

中空四角錐

内部が中空になっている四角錐。
使用する紙の面積を変えること高さを変化させることができる。

中空四角錐

中空四角錐

Pyramid v1.3

折り畳み三角錐

鈍角三角錐を立体沈め折りの技法で縦に押しつぶした構造。
立体沈め折りが留め折りになり、安定した構造になる。

折り畳み三角錐

折り畳み三角錐

Pyramid v1.4

非対称三角錐

鈍角三角錐を立体ねじり折りで変形して作られる三角錐。
左右非対称な構造になることが特徴。

非対称三角錐

非対称三角錐

Pyramid v1.5

八角錐

底面が正八角形の中空な錐体構造。仕上げの折り方を変えることで先端の角を窄めて鋭くすることができる。

八角錐

八角錐

Pyramid v1.6


4. 曲面・近似構造コンポーネント

完全な曲面ではなく、ポリゴンによって曲面を近似する構造群です。

立方八面体

立方体の各頂点を立体沈め折りして作られる立方八面体。
の近似として電球などの構造を作る際に使いやすい。

立方八面体

立方八面体

立方八面体 v1.0

八角錐台

八角錐の上部を切り落としたようなボウル状の構造。
ワイングラスのカップ部分、クラゲやキノコの傘の部分などの曲面を近似で表現する際に使いやすい。

八角錐台

八角錐台

錐台 v1.0

5. 複合コンポーネント

基本コンポーネントを組み合わせてできたポリゴン・コンポーネントを、さらに組み合わせて出来た構造。

浮き彫り十字

浮き彫りの十字構造。
帯付き立方体を組み合わせた複合コンポーネント。

浮き彫り十字

浮き彫り十字

十字 v1.0

浮き彫り十字(穴あき)

中央が凹んだ浮き彫りの十字構造。
帯付き立方体を組み合わせた複合コンポーネント。中央の構造を反転させて凹みを作成している。

中央凹み浮き彫り十字

中央凹み浮き彫り十字

十字 v1.1

入れ子立方体

凹んだ直方体の中央に立方体がある構造。
帯付き立方体と基本立方体を組み合わせた複合コンポーネント。

入れ子立方体

入れ子立方体

入れ子立方体 v1.0


構造としての捉え方

これらのポリゴン・コンポーネントは、

  • 単体で完結する形
  • 他のコンポーネントと接続可能な構造
  • 骨組み・表皮・装飾のいずれにも使える

という特徴を持ちます。

重要なのは、1つの「形」として扱うのと同時に、より大きな構造の「構造単位」としても使えると理解することです

各コンポーネントを理解し、組み合わせ・変形・反復することで、より複雑で説得力のある立体折り紙を設計することが可能になります。

設計思想としてのポリゴン・コンポーネント

ポリゴン・コンポーネントを意識すると、立体的構造的に自立しやすいデザインを体系的に設計できるようになります。

なぜなら、ポリゴン・コンポーネントには強い構造を持つものがいくつかあり、そのような構造を作品の骨組みに使用することで、針金や接着剤などの補助がなくても立体的な形状を折り出すことができるからです。

この設計思想を応用すると、従来の平坦分子とポリゴン・コンポーネントを組み合わせることもできます。ポリゴン・コンポーネントのそれぞれの面は平面であるため、平坦分子を使った造形が可能になるためです。

「構造のレイヤー(ポリゴン・コンポーネント)」と「表現のレイヤー(面で使用する平坦分子)」を複層的に重ね合わせた表現も行うことができ、より彫刻的な表現が可能になります。

これは、折り紙を「畳む技法」から「立体を構築する設計行為」へと拡張する考え方であり、様々な表現に応用できる設計思想であると考えられます。

非平坦分子が拓く折り紙の設計領域

ポリゴン・コンポーネントは、非平坦であることを特徴とする折り紙分子の一種であり、面と角で立体を構成する設計単位です。また、平坦性を前提としない設計を取り入れることで、折り紙における彫刻的な表現が可能になります。

このポリゴン・コンポーネントを使い、Kamiori-Studioは折り紙としての見立ての表現と彫刻的な量感が重なり合い、写実性と抽象性が同時に感じられるような造形表現を追求しています。

また、本サイトでは、さまざまなポリゴン・コンポーネントの折り方や構造を紹介しています。まずは一つひとつ実際に折ってみて、立体が立ち上がる感覚を体験してみてください。その中で立体表現の面白さを感じられたら、ぜひポリゴン・コンポーネントを軸にした設計にも挑戦していただければと思います。

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Tomoaki HamanakaOrigami designer